本作はいわゆる生涯で一本と挙げるような種類の映画ではありません。むしろ、肩の力をぬいて、大人のお伽噺として、余裕を持ちながら楽しむべき一本としてオススメです。
【映画】アメリカン・プレジデント

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多忙な日々を送るシェファード大統領は、たまたまの空き時間に環境破壊を抗議する弁士シドニーに出会う。ふたりきりで話をした大統領は彼女に一目ぼれ。フランス大統領就任の祝賀晩餐会に招き、招待客らの前で一緒にダンスを踊る。これをきっかけにふたりの仲は急接近するが、次の大統領選挙の対立候補ラムソンは大統領の恋を格好の攻撃材料として批判。シドニーは大統領を愛するが故、自分から姿を消してしまう。支持率は落ちる一方、対立候補は攻撃をますます強くする……。
脚本
脚本は他の記事でもご紹介しているアーロン・ソーキン氏。
様々な政治問題を下敷きにしつつ、恋愛ストーリーを破綻なく進行させていくストーリー運びの手際は、やはり素晴らしい。この映画の中では、大統領(マイケル・ダグラス)とロビイスト(アネット・ベニング)が恋に落ちる相手は「ロビイスト」、日本ではあまり聞かない職業ですが、欧米で普通に使われています。
因みに、ロビイストとは
ロビー活動(ロビーかつどう、lobbying)とは、ある特定の主張を有する個人または団体が政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う私的な政治活動。議会の議員、政府の構成員、公務員などが対象となる。ロビー活動を行う人物はロビイスト(lobbyist)と称されます。via wikipedia
となっています。
その後、恋に落ちた二人が、ホワイトハウスで一夜を過ごしたことがスキャンダルとなるのですが、なるほど、特定の目的を持った女性と大統領が恋愛するわけですから、問題になるのも合点がいく話ですね。
結局、それが原因で大統領支持率が急激に低下、そこにさらにお互いの主張や恋模様が絡んで物語が進んでいく訳ですが、上映当時に観た時と比べて、2008年の現在に再度鑑賞してみると、少しだけ違和感がありました。
この映画が放映された時に、現実世界では既にクリントンのスキャンダルが暴かれていて、正統な恋愛をベースにした映画より、むしろ現実の方がロマンスなしのエグイ展開で進行していました。
つまり、映画の筋書きとして作成した時点では、ある程度はコメディ映画ならではの、ある程度は映画らしいインパクト含んでいた筈なのですが、クリントンのスキャンダルのせいで、現実の反射としては、むしろインパクトがない、当時の米国知識人が現実にあったらいいなと希望するような「虚構のロマンス」としての上質な映画となってしまっています。
恐らく、制作側は声を大きくして云わないものの、
「大統領が恋愛するなと云わないから、もう少し上品にいかが?]
というのが、当時の本音ではないかとも思います。
そして、この映画で特筆すべき事は、脇役たち。
実に素晴らしい仕事をしています。本来は脇役というには、あまりにも豪華な俳優陣です。しかも、それが上手い具合に作用しています。後のテレビシリーズのホワイトハウス(The West Wing)の大統領役のマーティン・シーンが、長年の友人であり、且つ、仕事における右腕としての大統領補佐官を演じていますし、病気に冒される前の、マイケル・ J・フォックスも良い味を出しています。
ホワイトハウス マーティン・シーン
大統領のスピーチチーム
様々なテーマや俳優陣の素晴らしい演技を楽しめるという点でもおすすめで、是非とも、奥様やご家族と見て頂きたい作品です。
ちなみに、女性に失礼をしたら(私の場合は妻を怒らせたら)花を買って行くという習慣は、私自身はこの映画をみて覚えました。大統領であっても、イチ男性であれば女性に花を贈る…、一般の男性はなにをいわんかやである。
ダメもとで、花を贈る。是非、試してみることをお勧めしたいと思います。
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