谷川俊太郎さんを、ご存じの方も多いと思う。私にとっては、父親の本棚に置いてあった二十億光年の孤独を手に取った時が、
谷川さんの言葉の世界に触れた初めての経験だった。

評論家の吉本隆明さんは、下記のように谷川氏を評している。
谷川俊太郎さんは近代の詩の歴史の中で、北原白秋や三木露風などと同じように、言葉の個性をきちっと打ち出しながら純粋詩から歌謡までの多彩な作品を書くことのできる詩人の一人だ。手法的、技術的には現在の生々しい感性を備えながら、歌謡向きの作品も書くことができる。藤村以降、現代に至るまで多くの詩人は、いつでも自分の言葉の固有さにこだわり、不器用に力を投入する姿勢をいちずに示すだけだった。谷川さんのように多彩に、詩のジャンル全般に取り組んで高い技術で優れた作品を書くことのできる詩人は珍しいし、現在では他に見当たらないといっていい。
via「現代日本の詩歌」『谷川俊太郎』2003.4.30 毎日新聞社
そして、
谷川さんの著しい特徴は、そういうことを意識的に避けて、本当なら日常茶飯に転がっていてエッセイや日記に書き記すような、詩の主題にはもちろんのこと文学表現の主題としても少しも重くはないことを選んでいるところにある。そう主張してはいないが、小さな何でもない主題こそが人間性にとって重要なのだという価値観を信念としてもっていると思える。
via 「現代日本の詩歌」『谷川俊太郎』2003.04.30毎日新聞社
ともいっているのだが、さて貴方はどう思うだろう。
「これが私のやさしさです」の詩は、私の好きな歌い手であるBirdさんも曲の導入部に使用している。
窓の外の若葉について考えていいですか
そのむこうの青空について考えても?
永遠と虚無について考えていいですか
あなたが死にかけているときにあなたが死にかけているときに
あなたについて考えないでいいですか
あなたから遠く遠くはなれて
生きている恋人のことを考えても?それがあなたを考えることにつながる
とそう信じてもいいですかそれほど強くなっていいですか
あなたのおかげで
こちらのアルバムに収録。
当時は、この詩を曲に利用したbirdさんのセンスにいたく感心したものだが、調べてみたら歌詞の制作に関わった経験がなかった彼女に、友人が谷川氏の詩集を薦め、そして感銘を受けたことが歌詞を書き続ける動機になったと、彼女自身がインタビューで答えていた。
その時に薦められた詩集。
そのまんまでした。ちなみに、曲の導入部である詩の部分をTHE BOOMのヴォーカリスト・宮沢和史さんが朗読していて、その声がなんとも素晴らしい。ラップの部分は、谷川さんとは異なった意味で、言葉の再構築をラップという表現方法を使って活躍している、日本では希有な才能をもったアーテイストであるTwigyさんが歌っているのだが、これも個人的には嬉しい。
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