こんにちは、JOLです。
ここまでの記事では、
フェラン・アドリアが創造性をどう“仕組み化”したのかを見てきましたが、
読んでいると、ある疑問が湧くんじゃないでしょうか。
「これ、チーム育成にもそのまま使えるのでは?」
そうなんです。
個人才能に依存しないエル・ブリの仕組みは、
そのまま“育成システム”とも言えます。
僕自身、メンバー育成で大切にしていることの多くが
フェランのやり方とほぼ一致していて、
この視点で整理すると「組織が強くなる理由」がとても明確になります。
今日は、
エル・ブリ式 創造OS × ジャイアン流育成
という切り口で、育成方法を分かりやすくまとめます。
1. 育成の最初の一歩は、“棚卸し”である
(本人の強み・弱み・判断OSを見える化しておく)
料理界もビジネスも同じですが、
育成がうまくいかないチームに共通するのは、
「メンバーの棚卸しがない」
という点です。
なんとなく
「この人は伸びそう」
「この人は慎重タイプだよね」
みたいに扱ってしまう。
でも、エル・ブリは違いました。
フェランは、料理の創造と同じように、
“個々人のOS構造”すらも解像度高く把握しているんです。
JOL流で言うなら、育成の最初にやるべきはこうです。
■メンバー棚卸し項目
・強み(どんな状況で発揮されるか)
・弱み(どういう条件で発動するか)
・判断基準(その人なりのOS)
・経験の偏り
・成功パターンの共通点
・失敗しやすい状況
これらが揃っているだけで、
メンバー育成の精度が一気に変わります。
育成って、本人を理解するところからしか始まらないんですよね。
2. 基準のない育成は、本人も管理者も不幸になる
(エル・ブリの“創造基準”は、育成における“評価OS”と同じ)
フェランが創造の基準を作っていたように、
育成にも“基準”が必要です。
多くのチームでは、
・成長した気がする
・できてると思う
・もう任せてもいいかも
みたいに、感覚で判断しがちです。
でも、基準がないと当人も迷いますし、
マネージャーも“期待値”が揃いません。
JOL流では、
育成の基準=再現可能な判断プロセス
と定義しています。
■たとえば、こんな基準を用意する
・事実と推測を分けて説明できる
・判断の理由を明文化できる
・同じケースを別の状況でも応用できる
・時間軸を分けて考えられる
・優先順位の基準を持っている
これらは職種に関係なく使えます。
基準の有無だけで、
育成の成功率が2〜3倍変わることすらあります。
3. 権限移譲は「任せること」ではなく「OSを共有すること」
(丸投げ育成と、自然に伸びる育成の分岐点)
映画でも描かれていますが、
フェランは次の世代にどんどん仕事を渡していました。
ただし、丸投げではありません。
彼らが迷わないように、OS(基準・思想・プロセス)を完璧に渡している。
JOLが育成で重視しているのもこれです。
■良い権限移譲
「判断基準はこれ。
失敗のラインはここ。
再現するならこういうプロセスで。」
(任された人が自由に動ける状態)
■悪い権限移譲
「やってみて」
(任された人が不安で動けない状態)
育成において、
「安心して任せる」ではなく「安心して任せられる環境をつくる」
が正解なんですよね。
これって結構忘れられがちです。
4. 成長は「過去×現在×未来」の三層で起きる
(フェランの“3要素”が、そのまま育成の3ステップになる)
フェランが創造性の基準を
「歴史×現在×未来」で整理していたのと同じように、
育成も同じ三層で考えるとうまくいきます。
■1. 過去(経験の棚卸し)
・今まで何ができたか
・どういう時に成果が出たか
・成功パターンをどう言語化できるか
■2. 現在(OSのアップデート)
・今の判断基準を改善する
・失敗の再現条件を把握する
・新しい視点を渡す
■3. 未来(拡張性の獲得)
・次のレベルをどこに置くか
・本人の強みをどう伸ばすか
・自走できる仕組みを作る
この三層を意識して育成すると、
「急にできるようになった!」という瞬間が増えていきます。
5. メンバー育成は“未来に対する投資”である
(R&Dの視点を持つと、成長スピードが劇的に変わる)
多くのチームがやりがちなのが、
・忙しいから育成が後回し
・即戦力ばかり求める
・できる人に負荷が集中
・新人が育たない
という悪循環です。
でも、フェランは
「未来に対する投資」という視点で人を育てていました。
料理の研究も、メニュー開発も、教育も、
全部が“未来価値の創出”なんですよね。
ビジネスも同じで、
・短期売上
と
・メンバー育成
のどちらを優先するときかを誤ると、
組織は長期的に弱くなります。
育成はコストではなく、
未来のリターンを最大化するR&D活動です。
この発想に変えるだけで、
チームの空気がかなり変わります。
6. 最後に:育成とは「OSを渡すこと」である
(才能を育てるのではなく、思考の枠組みを渡す)
フェランの育成を見ていると、
結局やっていることはとてもシンプルなんです。
「判断基準を渡す」
「失敗ラインを明示する」
「過去・現在・未来を整理する」
「OSそのものを共有する」
これさえ整えば、
人は勝手に伸び始めます。
逆に、OSが渡っていない状態で仕事を任せても、
本人は不安で動けませんし、
成果も偶然になります。
育成とは才能磨きではなく、
思考OSのインストール作業。
この視点で育成できるチームは強いですし、
長期的な競争力も圧倒的に伸びていきます。



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