こんにちは!ジャイアン(@GIANSTEP1)です。
今日は、ナシーム・ニコラス・タレブの『まぐれ(Fooled by Randomness)』を読みながら、あれこれ考えたことをまとめたいと思います。
いわゆる「投資の本」と言い切れないくらい内容が広くて、読んでいるうちに、自分の思考のクセまで見直されるような不思議な読書体験でした。
実務にも人生にも使える話なのに、ちょっと笑えるところもある。
そんな本です。
1. タレブの主張はシンプル:「人間は偶然を実力だと思いがち」
タレブは、金融の世界を長く生きてきたトレーダーであり、大学で不確実性を教える研究者でもあります。
そんな彼が繰り返し強調するのは、
「短期の成功を実力だと思いこむのは、人間のデフォルト設定だよ」
ということです。
私たちは、成功すると「やっぱり自分の分析は正しかった!」と思い、
失敗すると「今回は運が悪かっただけだ」と言い訳しがちです。
これ、投資だけではなく、仕事でもそうですよね。
プレゼンがうまくいけば実力、クライアントの機嫌が悪ければ運のせい。
ちょっと耳が痛いです。
そしてタレブは、この“錯覚”のせいで、金融の世界で多くの人が吹き飛んでいくと語ります。
なぜかというと、人間は 確率を直感で理解するようにはできていない からです。
難しい話のあとは、少しやさしく言うと……
「たまたまをたまたまと処理するのが苦手」ということです。
2. ランダム性は想像よりずっと強い
でも人は“意味”を読み取ろうとする**
“市場は正規分布に従う”という綺麗な理論があります。
平均と標準偏差を計算すれば、だいたいの振れ幅が予測できるというあの話ですね。
でも現実の市場はそんなに素直ではなく、
・標準偏差10倍の下落
・一夜にしての大暴落
が普通に起きる。
理論では10の24乗年に一度のはずなのに。
ここでタレブはこう言います。
「人間が扱える世界より、現実の世界の方が荒っぽいんだよ」と。
そして、そんな荒っぽい世界を前にすると、
人間は“意味”を作って安心したくなる。
たまたま勝てば「戦略が当たった」と思い、
たまたま負ければ「市場が予想外だった」と嘆く。
でも、実際にはほとんどの場合、
「ただのまぐれ」です。
ちょっと厳しいですが、その方が世界を正しく見られる気がします。
3. 吹き飛ぶ人の共通点
なぜトレーダーは負け始めると“長期投資家”になるのか
タレブが面白かったのは、
「市場で吹き飛ぶ人は、だいたい似た行動をとる」
と指摘していたところです。
たとえば、
・ポジションに感情移入しすぎて手仕舞いできない
・損が出た瞬間に「長期投資だから」と言い始める
・自分の分析手法が間違っている可能性を考えない
・ストップロスを置かず、気合と根性で戦おうとする
これ、投資だけでなく、人生やビジネスでも同じですよね。
負けているときほど、「戦略の変更」より「言い訳の変更」が起きる。
タレブは容赦ありません。
「吹き飛ぶ人は勇敢なのではなく、世界を理解していないだけだ」とまで言います。
いやほんと、トーンは辛辣です。
でも内容は正しいんですよね。
4. リスクは“頭”ではなく“感情”が管理している**
本書で印象的だったのが、
「リスクを察知するのは、思考よりも感情の領域」という指摘 です。
扁桃体(恐怖などの感情を司る部分)が強く反応すると、
どれだけ理屈を理解していても、人は冷静に判断できなくなります。
逆に、あまりに合理的すぎる人は、扁桃体が弱く、
“怖さ”がなくなることで判断が極端になりがちだという研究もあるそうです。
つまり、
めちゃくちゃ冷静に見える人が最強というわけでもない。
投資では「怖さ」を抑えるのではなく、
怖さが暴走しない仕組みを先に作ること が必要なんですね。
例でいうと、
・ポジションサイズを小さくする
・損失の上限を固定する
・「損したら長期投資家になる」癖を封印する
こうしたルールは、感情の暴走を防ぐ“ガードレール”になります。
5. タレブ版「プロの矜持」
確率を受け入れ、期待値を抱え込む姿勢
本書で一番好きだったのは、夕食の支払いのエピソードです。
硬貨投げで支払う人を決めて、タレブが負けて払ったとき、
仲間のローズがこう言います。
「ぼくも確率論的には半分払ったぞ」
じわっときませんか?
・結果はランダム
・期待値は共有されている
・一回の勝ち負けは誤差
この姿勢こそが、タレブのいう“プロとしての態度”なのだと思います。
そして、
「運命の女神の奴隷になるな」
というメッセージにもつながります。
結果ではなく、態度で勝負する。
この考え方は、投資OSにも仕事にもそのまま使えます。
6. 私がこの本から持ち帰ったもの
運を否定せず、運に潰されない設計をする
最終的に『まぐれ』は、
「投資とは、運と実力を分けるゲームではなく、運の中でどう生き残るかを設計するゲームだ」
という視点をくれました。
私が取り入れたいと思ったのは、こんなところです:
・短期の結果を過度に意味づけない
・運を軽視しない
・負ける前提で、あらかじめ“逃げ方”をつくっておく
・期待値のある行動を続けて、誤差を積み上げない
・ルールは感情の暴走を封じるために存在する
タレブが伝える“謙虚さ”は、メンタルではなく構造に宿ります。
まとめ:『まぐれ』は「偶然と仲良くなるための本」
投資の本というより、
「人間の思考の限界を一度リセットするための本」
という方がしっくりきます。
世の中にはまぐれもある。
でも、だからこそ“負けない設計”を積み重ねる人が最後に残る。
そんな感覚を、読みながらじわじわと再確認しました。
というわけで、もし最近の勝ちで少し気分が大きくなっていたり、
逆に負け続けて自信をなくしていたりするなら、
この本はちょうどよい“冷却材”になると思います。
そして、冷静になったところで、
また淡々と期待値のある選択を積み重ねていく。
それが、運にも実力にも振り回されない投資の姿勢だと思います。



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