成功の鍵「やり抜く力」は万能ではない|グリットについて私たちが誤解している5つの事実

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こんにちは。

「成功は才能で決まることが多い」。
私たちは長いあいだ、そう信じてきました。

でも、現実をよく見てみると、
それだけでは説明できない成功例が、意外とたくさんあります。

『実践版 GRIT やり抜く力を手に入れる』の著者、キャロライン・アダムス・ミラーの息子も、その一人です。大学時代の成績は、特別に目立つものではありませんでした。それでも彼は、長年にわたって「水泳」を続けていました。派手な結果が出なくても、やめなかった。その結果、就職活動では、厳しい環境にもかかわらず、国内最大手クラスの会計事務所から次々と声がかかります。

企業が評価したのは、水泳の成績そのものではありません。
一つの目標を長い時間追い続け、壁に当たっても撤退しなかった「行動の履歴」でした。

ここで見られていたのは、才能ではなく、
「どういう選択を積み重ねてきたか」という事実です。

この力が、グリット(やり抜く力)と呼ばれています。

この記事では、このグリットについて、
私たちがつい思い込んでしまいがちな5つの誤解を整理してみます。

努力を称える話ではありません。
壊れずに前に進むための、現実的な話です。

正直に言うと、私自身も、
「やり抜けなかった自分」を責めたことが何度もあります。

でも振り返ると、
問題は意志の弱さではなく、
「やり抜く前提」を間違えていただけでした。



定義|グリットとは何か

グリットとは、
「長期的な目標に対する情熱と粘り強さ」を指します。

ただし、ここで一つ、大事な注意があります。

グリットは、
「何でも我慢する力」でも、
「途中でやめない根性」でもありません。

実際には、

  • 何を続けるか
  • いつ引き返すか
  • どこに時間やエネルギーを使うか

こうした判断の積み重ねとして表れます。

この前提を取り違えると、
グリットは、途端に扱いづらい概念になります。


事実① 高すぎる目標は、やる気を奪うどころか燃料になる

最近は、「自尊心を傷つけないため」に、
あえて高い目標を見せない、という考え方も増えました。

でも、それは本当に成長につながっているのでしょうか。

ミラー氏の息子が所属していたスイミングクラブでは、
かつてのオリンピック選手の記録ボードが隠されていました。
「子どもが落ち込むから」という理由です。

ところが著者は、その方針を変えました。
記録と写真を、あえて見える場所に出したのです。

結果は、少し意外でした。
子どもたちは萎縮するどころか、
「あそこを目指したい」と目を輝かせ始めたのです。

ポイントは、目標の高さそのものではありません。
努力すれば届くかもしれない余地が残っていること

「絶対に無理」ではなく、
「もしかしたら届くかも」。
その距離感が、人を前に進めます。


事実② やり抜く力は、ときに“毒”になる

ここが、グリットの一番ややこしいところです。

グリットは、いつも良い方向に働くとは限りません。
場合によっては、人を壊します。

ミラー氏は、
「アドルフ・ヒトラーも、定義上はグリットを持っていたのではないか」
という、かなり踏み込んだ問いを投げかけています。

ここから見えてくるのが、
良いグリットと、悪いグリットの違いです。

代表的な例を挙げると、

  • 称賛を得るために努力を装う「虚栄グリット」
  • 状況が変わっても引き返せない「強情グリット」
  • 成果を独占し、周囲を軽視する「セルフィーグリット」

どれも、表面上は「頑張っている人」に見えます。

でも、共通点があります。
目的が、いつの間にか自己正当化にすり替わっていることです。

努力が外ではなく、内に向いた瞬間、
グリットは危うくなります。

この状態に入っているときほど、
本人は「まだ頑張れる」と思ってしまう。
ここが、一番厄介なところです。

強さの問題ではありません。
その努力が、世界を少しでも良くしているかどうか
そこが分かれ目です。


事実③ 「才能を褒める言葉」が、グリットを奪っている

スタンフォード大学の心理学者、キャロル・ドウェックは、
人の思考様式を2つに分けました。

  • 能力は生まれつきだと考える「硬直マインドセット」
  • 能力は伸ばせると考える「しなやかマインドセット」

前者では、「賢いね」「才能あるね」という言葉が、
かえって挑戦を避ける原因になります。

大事なのは、
単に「努力したね」と言うことではありません。

どの判断がよかったのかどこで踏みとどまったのか
その2点を具体的に返すことです。

少し地味ですが、
これが次の挑戦を支えます。


事実④ グリットは、環境を通じて伝染する

グリットは、個人の性格だけで決まりません。
かなり、環境に左右されます。

アンジェラ・ダックワースは、
米国陸軍士官学校で、こんな実験をしました。

グリットの低い候補生を、
高い候補生と同じ部屋にしたのです。

すると、時間とともに、
低かった側のグリット・スコアが上がりました。

意志が強くなったわけではありません。
困難への向き合い方が、日常的に共有されただけです。

環境は、運ではありません。
ある程度は、選べます。


事実⑤ すべてをやり抜く必要はない

グリットが高い人は、
何でも我慢する人ではありません。

むしろ、
やらないことを、はっきり決めています

心理学者ロバート・バレランドは、
情熱を2種類に分けました。

  • 人生と両立できる「調和的情熱」
  • 評価や勝利に縛られる「執着的情熱」

グリットが支えるのは、前者です。

だから、結論はこうなります。

グリットとは、
何をやり抜き、何をやり抜かないかを選ぶ力


まとめ|グリットを、もう一度定義してみる

ここまで見てきたように、
グリットは性格でも、美徳でもありません。

時間とエネルギーを、どこに使い、どこで引くかを決める技術です。

整理すると、

  • 高い目標は、燃料になる
  • 方向を誤ると、努力は毒になる
  • 褒め方が、挑戦の質を変える
  • 環境が、粘り強さを支える
  • 集中と放棄の選択が、結果を分ける

私はいまでは、何にグリットを注いで、
または何から手を引くべきかを、
定期的に問い直すようにしています。

あなたは、どうでしょうか?

そこを見直すだけで、
続けることは、少しだけ楽になるもしれません。
今日は、そんな話でした。



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