マネジメントは気合では回らない|HIGH OUTPUT MANAGEMENT再読記

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こんにちは!

今日は
「3分間のゆで卵が教える、インテル伝説のCEOの経営術」
というテーマで書いてみたいと思います。

題材は、あまりにも有名な一冊、
HIGH OUTPUT MANAGEMENT です。

正直、この本の価値については、
いまさら私が大声で説明する必要はないと思っています。
名著としての評価は固まっていますし、
何より ベン・ホロウィッツ の熱量の高い序文が、
この本の立ち位置を決定づけています。

それでも、です。
「なぜ今でも読む意味があるのか」
そして
「どこでは効きにくいのか」
この2点を整理すると、この本の輪郭がかなりはっきりしてくる気がします。


なぜこの本を手に取ったのか

私が最初にこの本を読んだきっかけは、どこかで流れていたツイートでした
「マネジメントって、結局なにをすればいい」問題というのは、
マネジメント歴が長くなっても抱える不安なので
すぐに興味を持って読み始めたという記憶があります。

読んでみて感じたのは、
この本が抽象論をほぼ語ってないということです。
精神論も、理想論も、あまり出てこない。
代わりに出てくるのは、
「じゃあ、具体的に何をやるのか」という話ばかりです。

著者の アンドリュー・S・グローブ は、
言うまでもなく インテル を率いた実務家です。
机上ではなく、現場で鍛えられた原理だけが残っている。
その感じが、読む側にはかなり刺さります。


本書が示す、シンプルすぎる3つの原則

1|チームアウトプット志向

まず、いちばん有名な定義から。

グローブは、マネジャーの成果をこう定義します。

マネジャーのアウトプット
= 組織のアウトプット + 影響力が及ぶ周辺組織のアウトプット

つまり、「自分がどれだけ頑張ったか」は、ほぼ関係がありません。
評価されるのは、結果として、どれだけ成果が生まれたかだけです。
ここがシビアで、同時にフェアです。
個人最適では足りない。価値連鎖全体を見る必要がある。
本来の前提に、強制的に立たされます。

2|マネジメント・レバレッジ志向

次に出てくるのが、レバレッジという考え方です。

マネジャーの時間は有限です。
だからこそ、
* 影響範囲が広いか
* 効果が増幅するか
この2点で仕事を選べ、と言われます。

慣習的に続けている会議。
前例だから残っている業務。
それらは、気づかないうちにボトルネックになります。

「本当に必要か?」
「やめたら、何が起きるか?」

それを問い直すのも、マネジメントだ、という話です。

3|ピークパフォーマンス志向

最後は、人に関する原則です。

チームの成果は、結局のところ、
個々人のパフォーマンスに依存します。

だから、
* 士気をどう保つか
* どう育成するか
これらは、「余裕があればやる仕事」ではありません。

グローブが1on1を強く推したのは、単なる面談テクニックの話ではなく、成果設計の話だからだと思います。


朝食工場の話が、やたら頭に残る理由

本書の冒頭に出てくるのが、有名な「朝食工場」の例えです。

卵をゆでる。
トーストを焼く。
ベーコンを焼く。

その中で、いちばん時間がかかる工程が、全体を支配する

だから、
* ボトルネックを特定する
* できるだけ上流で問題を潰す

この2点が重要になる。

正直、かなり単純な話です。
でも、この単純さが、そのまま強さになっています。

戦略論がふわっとしがちな場面でも、
この本は、ずっと「実行」の話をしています
そこが、現場の人間には刺さります。


ボトルネックについては、こちらの記事でも。

なぜ、忙しいのに仕事が終わらないのか | 『ザ・ゴール』が教えてくれたマルチタスクの落とし穴
忙しいのに仕事が終わらない理由は、努力不足ではありません。名著『ザ・ゴール』の制約理論から、マルチタスクをやめて成果を出す4つの仕事術を解説します

なぜ「今」この本を推したいのか

グローブは、この本をミドル・マネジャーに向けて書いた、と明言しています。
さらに面白いのは、「ノウハウ・マネジャー」という概念です。
正式な命令権限はない。でも、知識と技能で周囲に影響を与える人。

リモートワークが当たり前になった今、
価値は肩書よりも影響力に宿ります。
部門間の摩擦や、実行の詰まりは、この層をどう巻き込むかで決まってくるといえます。

だから、この本は今でも現役なのでしょう。


この本が効きにくい場面もある

とはいえ、万能ではありません。

たとえば、

  • 正解がまだ見えない探索フェーズ
  • 創造性そのものが価値になる初期研究やアート寄りの組織

こうした場面では、朝食工場モデルは少し噛み合いません。
そもそも、ボトルネック自体が定義できないからです。

この本は、実行と再現性が求められる局面で、
最大の力を発揮する本だと思います。


読後に残った、いくつかの実務的な視点

特に印象に残ったのは、このあたりです。

  • KPIは事後評価ではなく、早期観測のための装置
  • 地位パワーより、知識パワーを引き出す設計
  • 育成は短期成果ではなく、中長期投資

結局、すべて「マネジャーのアウトプットとは何か」
という定義に戻ってきます。


というわけで

マネジメントは、正直かなり難しいです。
論理も、人も、時間軸も、全部扱わないといけない。

でも、自分の影響力を、
組織全体に拡張できる役割でもあります。

HIGH OUTPUT MANAGEMENTは、
精神論ではなく設計を、
戦略ではなく実行を教えてくれる本です。

最後に、一つだけ問いを置いて終わります。

今日のあなたの仕事を「朝食工場」として見たとき、
最初に見直すべき工程は、どこでしょうか。

考える材料として、
この本は、今でも十分すぎるほど役に立ちます。


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