こんにちは。
なぜ、いつも忙しいのに仕事が終わらないのか
今日は、「ちゃんと働いているはずなのに、なぜか仕事が終わらない問題」について書きます。
次から次へとタスクが舞い込み、気づけば今日も残業。
手はずっと動いているのに、重要な仕事だけが前に進んでいない。
この状態、能力不足やサボりで説明されがちですが、正直かなり無理があります。
問題はたいてい、本人ではなく「働き方の前提」にあります。
しかもそれは、多くの場合「正しい」と教えられてきたものです。
「早く始める」「同時に進める」は、本当に正しいのか
仕事ではよく、こんなことを言われます。
- 早く着手したほうがいい
- 優先度が高いものは全部すぐやるべき
- 同時並行で回せる人が仕事ができる
直感的には、たしかに正しそうです。
でも、もしその常識が全体の完了を遅らせているとしたらどうでしょうか。
この記事では、世界的な名著『ザ・ゴール』で示された
TOC(制約理論)をベースに、
日常業務でそのまま使える「4つの仕事の考え方」を整理します。
結論はシンプルです。
でも、一度体感すると、元には戻れません。
前提|TOCは「仕事術」ではなく「思考の型」
TOC(Theory of Constraints)は、生産管理の理論として知られています。
ただ、実務で効く理由は別のところにあります。
TOCの本質は、
「全体最適で考えるための、判断の型」です。
システム全体の成果は、
常に「今この瞬間、もっとも全体を縛っている一点」で決まります。
それ以外をどれだけ改善しても、全体はほとんど動きません。
そして重要なのは、
制約は時間と状況によって移動するという点です。
常に一つとは限りませんが、
「今いちばん影響が大きい一点」は、必ず存在します。
TOCは、それを見失わないためのレンズです。
仕事術1|シングルタスクで「遅延」をなくす
「全部最優先」は、実は「全部遅くなる」
まずやるべきことは、マルチタスクをやめることです。
TOCでは、同時並行は完了時点を遅らせると考えます。
有名な思考実験があります。
20秒で終わる緊急タスクが、3つ同時に来たとします。
- 同時進行:少しずつ触る → 全部終わるのは60秒付近
- 集中実行:1つずつ片付ける → 20秒、40秒、60秒で順に完了
後者では、最初の成果がすぐ出ます。
請求も次工程も早く回せます。
知的労働では、作業の切り替えそのものがコストです。
マルチタスクは「進んでいる感」は出ますが、
「終わる速度」には、ほぼ貢献しません。
仕事術2|努力は「ボトルネック」にだけ向ける
全体の成果は、いちばん遅いところで決まる
次は、頑張りどころを間違えない話です。
たとえば、こんな工程があるとします。
20 → 12 → 16 → 15 → 10
このとき、全体の出荷量は「10」です。
どれだけ最初の「20」を改善しても、結果は変わりません。
非制約の改善は、自己満足になりやすい。
時間は最も貴重な資源です。
制約以外に使った時間は、基本的に回収できません。
なお、非制約はサボらせるわけではありません。
制約を止めないために従属させる。
これがTOCの運用の肝です。
仕事術3|「見えない制約」を言葉にする
組織を止めているのは、工程より思い込み
現場を縛っている最大の制約は、
物理的な工程ではないことが多いです。
それは、思い込み(ポリシー制約)です。
ゴールドラットは、その背景にある
人間の3つの恐れを指摘しています。
- 複雑さへの恐れ
全体を見るのを避け、部分最適に逃げる。 - 未知への恐れ
不確実性を嫌い、過剰な計画に依存する。 - 対立への恐れ
衝突を避け、妥協で先送りする。
これらは「存在する問題を、存在しないことにする判断」を生むので、
工程だけでなく、評価制度、ルール、暗黙の前提まで疑う必要があります。
仕事術4|集中とは「やらないこと」を決めること
Focus = Not To Do
最後は、これまでの統合です。
集中とは、
やることを増やすことではありません。
今はやらないことを決める行為です。
新しい依頼が来たとき、
すぐ着手する前に、こう問いかけます。
今、全体をいちばん縛っている制約は何か?
それ以外は、意図的に後回しにします。
この判断を支えるのが、TOCの4つの信念です。
* 人は善良(人ではなく仕組みを見る)
* ウィン・ウィンは常に可能
* 「わかっている」と言わない
理想論ではありません。
これを失うと、組織は必ず部分最適に戻ります。
あわせて補足|制約は動く。だから考え続ける
制約は固定ではありません。
改善すれば移動します。
人が変われば、時間帯が変われば、
評価制度が変われば、制約も変わります。
TOCは万能解ではありません。
ただ、判断を大きく外しにくくする道具です。
まとめ|あなたの仕事は、どこで止まっているか
忙しさは、成果の代わりになりません。
生産性は、
「全体を縛る一点に集中できているか」で決まります。
* 制約以外の改善を捨てる
* 思い込みという制約を疑う
* 「やらないこと」を決める
次に手を動かす前に、
一度だけ立ち止まって問いましょう。
今、全体を最も縛っている制約は何か。
答えが見えた瞬間、
やることは、驚くほど少なくなります。



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