こんにちは!今日は、稲盛和夫さんの『実学』について話したいと思います。
この本、やさしい文章なのに、読んだ人によって反応がすごく分かれるんですよね。
「めちゃくちゃ読みやすい!」という人もいれば、
「なんか精神論ぽい…?」という人もいる。
でも、会計や経営の構造に触れてきた人からすると、
「いやいや、中身はめちゃ骨太ですけど…?」
という感想になりがちです。
文章のやさしさと、内容のガチ度のギャップ。
この“ねじれ”が、実学の面白いところなんです。
財務会計と管理会計は別だけど、経営では両方使わないと迷子になる
(片方だけだと、地図を半分だけ持って歩いてる感じになります)
まず、財務会計と管理会計の関係をサクッと整理しておくと理解しやすいです。
財務会計は、外部に見せるための数字。
「ちゃんとしてますよ〜」と伝えるための過去データのまとめ、みたいな感じです。
一方で管理会計は、未来のために使う数字。
こっちは「これからどうする?」を考えるための道具です。
で、経営って本来、
過去(財務)→現在(実務)→未来(管理)
という流れで意思決定するものなので、どちらかだけでは不自然になります。
財務だけ見ると「とりあえず前年よりちょっと増やす?」みたいな発想になり、
管理会計だけ見ると「理想はこうだから、とりあえず売上○倍で!」みたいに飛びます。
この二つがきれいにつながってようやく、
“なんとなくじゃない意思決定”ができるわけですね。
予定や予算は“気合い”ではなく、構造から得られる「未来の数字」
(大事なのはテンションじゃなくて仕組みです)
稲盛さんが「予定(予算)は実績と同じくらい大事」と言うのは、精神論ではありません。
予定や予算って、ほんとは未来の会計なんですよね。
テンションで「前年比10%UP!」とか決めるものではなくて、
財務(過去)と管理会計(未来)をちゃんとつなげた結果としての数値です。
正しい流れはこんな感じです。
- 財務会計で会社全体の目標を決める
- 管理会計で部門の“現実的な数字”を考える
- 部門予算に落とす
- 個人の行動レベルに変換する
これを飛ばして気持ちだけで数字を置くと、
現場は「いや、できないっす…」ってなりがちです。
予算は未来を見るツールなので、構造がわかっていないと機能しないんですよね。
“よなきうどん”の例は簡単に見えるけど、本当は「利益の構造そのもの」
(材料費の話に見せておいて、実はP・V・M・Q・F・Gを全部扱ってます)
『実学』で有名な「うどん屋の採算」。
これ、書き方がやさしいのでサラッと読めちゃうんですが、
本当は 利益構造の説明ド直球 の章なんです。
うどんの材料費の話かな?と思いきや、裏ではこんな構造を扱っています。
・変動費(材料費)
・固定費(家賃など)
・売価(P)
・数量(Q)
・粗利(M)
・利益(G)
これ全部まとめたのが MQ会計 です。
・P(価格)
・V(原価)
・M(粗利=P−V)
・Q(数量)
・F(固定費)
・MQ(粗利総額=M×Q)
・G(利益=MQ−F)
ここで特に大事なのが Q(数量)。
数量って地味に見えるけど、利益を決める“重心”みたいな存在なんです。
・Mが同じでもQが増えるとFを吸収しやすい
・値下げしてMが下がっても、QでMQが跳ねることがある
・G=M×Q−F なので、Qが変わると構造まるごと変わる
つまり、「材料費を安くしよう」みたいな単発の話ではなくて、
P・V・M・Q・F・Gという“利益構造そのもの”を理解するための章なんです。
構造が見えていないと
「なるほど、材料費って大事なんだな」で終わっちゃいます。
でも、構造が見えると
「これ、経営の仕組み全部が入ってるじゃん!?」
と一気に世界が変わります。
MQ会計がわかると、『実学』全体が“別の本”に見える
(文章がやさしいのに、裏に構造のレイヤーがあると気づきます)
MQ会計の構造が頭に入った状態で『実学』を読むと、
同じ文章なのに“立体感”が全然違います。
・構造が見えない → 精神論の本っぽく見える
・構造が見える → 経営OSのまとめにしか見えない
文章の軽さと内容の重さがズレているので、
理解度によって“別の本”として感じてしまうんですよね。
だから『実学』は「読者を選ぶ本」と言われたりするわけです。
この順番で読むと、『実学』の解像度が勝手に上がる
(理解の積み上げが自然に起きるので、読むのがラクになります)
個人的におすすめの読書順があります。
- 人事屋が書いた経理の本
- 脱ドンブリ経営
- MQ戦略会計
- 6%売上アップで利益が2倍になるワケ (関連記事)
- 利益→税金→キャッシュ(関連記事)
- 稲盛和夫の実学
この流れだと、いい感じに理解が積み上がるんですよね。
・会計の基礎
・内部管理の視点
・利益の構造(MQ)
・利益の勘所
・最利益→税金→キャッシュ
・稲盛さんの思想
いきなり稲盛和夫の実学を読むと、「いい話だったな」で終わりがちですが、
構造がわかってから読むと「え、これ普通に実務書では?」と驚きます。
まとめ:『実学』は、やさしい文章で“構造”を語る珍しい本
(やわらかいのに、中身はガッツリ経営の仕組みです)
『実学』は、文章だけ読むとほんわかしてるんですが、
内容はめちゃくちゃ構造的という珍しい本です。
・財務と管理会計の接続
・予算のつくり方
・未来会計の感覚
・MQ会計による利益構造
こういう前提がそろうと、一気に読みやすくなります。
最初にピンとこなくても全然問題なくて、
むしろ構造を理解してから読み返すと“別の本”になります。
「いい話が書いてある本」から
「実務の意思決定に使える本」へ。
そんな変化が起きるので、気になる人はぜひ一度、順番を変えて読み直してみてください。



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